繰延税金資産て何だ?
簿記の勉強を進めていると大体みんながぶつかる壁というものがあります。
その一つが税効果会計です。
今回は、質問の多い税効果会計の繰延税金資産について、できるだけ簡単に解説をしてみたいと思います。
なるべくテキストに書いてないような視点から解説したいです。
私は一応公認会計士です。
もう苦手な人は税効果っていう文字が出てくるだけで嫌ですよね。
私も嫌いです。だいたい簿記の学習をしていて、多くの学習者がぶつかる壁は連結とか税効果という方が多いと思いますが、この連結とか税効果って、実態が見えずらいということが理解が進まない一因になってると個人的には考えています。
連結も親会社と子会社は別々の会社で事務所とか別ですけども、連結上は一緒にしろだとか言うわけです。
税効果も、これから解説しますけども、税金は税金で計算して払うんだけども、会計上計上してないことにしたり、逆に法人税等調整額増やして計上したことにしたりと、そういう調整の結果として出てきたのが、繰延税金資産だったり、繰延税金負債だったりするのです。
実態が見えないわけのわからん代物ですよ。そんなところが難しいのかなと思います。
前置きが長くなりましたが、さっそく繰延税金資産の解説へ行ってみましょう。
今回は、繰延税金資産とは何なのか?について少しでも理解が進めばいいなと思って書きます。
かなりファジーな解説でいきますので、細かい用語とか定義とかはご勘弁願います。あとあんまり仕訳も使わないようにしたいですね。
税効果会計の意義とは?
はいさっそく来ました。
まず、予備校やテキストなど、みんなが説明する税効果会計の意義です。
税効果会計、何のためにやってるの?という部分です。
これ、テキストとかにいろいろ難しいこと書いてますけど、一言でいえば、
本物の税金の金額は置いといて、会計上のあるべき税金の金額を計上したい
ということです。
ちょっと学習されてる方には、いやいやそれは繰延法の考え方で、とか言われそうですが、まあ、取っ掛かりとしては、資産負債法よりも理解しやすいわけです。
そのうち、税務上と会計上の資産負債のズレだということもわかってくると思います。
まだピンとこない方も多くいらっしゃると思いますので順番に解説していきます。
税効果の仕訳
税効果会計の代表的な仕訳と言えば
繰延税金資産/法人税等調整額
この仕訳が意味するところを解説します。
繰延税金資産は税金の前払い?
よく繰延税金資産は、「税金の前払い」に相当するものと解説があります。
これ、最初は意味不明、何言ってんだ?って思う人も多いと思うんです。
で、まず法人税等調整額についてみていきますと、
貸方の法人税等調整額は、収益科目ですので、損益計算書の法人税等を減らす効果があります。
税引前当期利益 100
法人税等 ▲50
法人税等調整額 10
当期純利益 60
こんな感じになるわけですね。
法人税等調整額を使って法人税等を10減らしてるってことは、
会計上はあるべき法人税等の金額は40ですよって言いたいわけです。
ここまで大丈夫でしょうか。
実際、税金は50おさめます。税金は会計とは別の税務申告書の計算で算出されます。
ここは変えることはできません。
会計上の税金金額は40なので、40しかおさめませんとか言ったら税務署に怒られてしまいます。
会計上の税金金額と税務上の税金金額
会計上の利益とは別に税金の金額が算出されるということまでは理解できましたね。
実際には税金は50おさめます。税法は会計側の事情なんぞ知りません。
税金は50って言ったら50です。
じゃあ、会計サイドではどうするかというと
とりあえず見た目だけでも変えとこう
とこうなるわけです。
つまり、会計の世界では、法人税等を10減らして、その分は前払いしたということにしましょうと。
税金の金額は動かせないので調整する仕訳を切る
さっそく仕訳をきります。
会計サイドからすれば税金は40なので、払っちまった10は前払金として資産計上
P/L法人税等も会計サイドからすれば40なので、法人税等を10減らす
前払金10/法人税等10
こういう仕訳を切りたいところですが、他の前払金とかと一緒になっちゃうし、ガチで法人税等を減らすといろいろと誤解を招きそうなので区分してわかりやすくしましょう。
繰延税金資産10/法人税等調整額10
という仕訳をきっとこう。
なんか会計テクニック駆使してるみたいでかっこええやん。となります。
そうです、税効果会計は、税金は税金でもう金額を動かせないので、しょうがなく会計上の調整仕訳をいれたということなのです。
税効果会計の仕訳が発生する理由
本来はこちらを前段で説明すべきなのですが、
あえて最後に解説を入れます。
そもそも、税効果会計の仕訳がなぜ発生するのでしょうか?
それは、会計上の利益・費用と税務上の益金・損金の範囲が異なるからです。
具体的にどう異なるかと言いますと、
会計上の費用と比べて、税務上は損金をきちんと確定するまで計上させない傾向があります。
損金をバカバカ認めてしまうと、税収が少なくなる上に、よくわからん費用も損金となり不平等感も生まれます。
益金-損金=所得 所得×税率=税金
ざっくりと税金こんな式です。かなり大雑把です。
益金から損金を引いた所得に税率を掛けますから、損金が大きくなると、所得が小さくなります。
あれもこれも損金にしていたら税収が少なくなってしまいます。
そんな事情があって、主に会計上の費用よりも税務上の損金が小さくなる傾向があります。
上記の例でも、法人税等を会計上は減らしていましたね。
会計上は費用の方が大きいからもっと税金は少ないはずでしょう?前払いにさせてもらいますわ。
という会計側からのメッセージなのです。
一方税務上は、いやいやちゃんと確定した費用以外認めへんでという主張です。
この両者のズレを調整します。繰延税金資産が計上されます。
税務上も永久に認めないものは少なくて、期が熟したら認めます。
それが一時差異です。永久に認められないのは永久差異です。
というわけで、これが税効果会計の仕訳が必要となる理由です。
つまり、会計上と税務上の調整の仕訳なのです。
以上、今回は繰延税金資産て何だ?について解説しました。
簿記の勉強のご参考になれば幸いです。
【簿記】その他有価証券評価差額金の仕訳の意味について【税効果の解説】