日商簿記3級対策~科目別解説「固定資産の売却」~
今回は「固定資産の売却」について解説していきます。
固定資産の売却について
今回は、減価償却を行っている固定資産を売却した場合の処理について説明します。
建物などの固定資産は、基本的に使い切るまで売ることを予定していません。逆の言い方をすれば、売ることを予定していないからこそ、10年なら10年で、毎年毎年決まった金額を減価償却費として落としていけるのです。
ただ、「本社ビルの売却が決まった。」など途中で固定資産の使用計画が変更になる場合があります。そのような時に、売却して受け取る金額や、今まで計上してきた減価償却費、残っている簿価などの処理が少し複雑になります。
固定資産の売却の仕訳について
以下の例で説明します。
「取得原価2,000,000円、減価償却累計額480,000円の建物を1,750,000円で売却し、現金を受け取った。」
(借)減価償却累計額 480,000 | (貸)建物 2,000,000 |
現金 1,750,000 | 固定資産売却益 230,000 |
「建物」という「資産」が減ったため貸方(右側)へ記入。
「減価償却累計額」という「負債」が減ったため借方(左側)へ記入。
「現金」という「資産」が増えたため借方(左側)へ記入。
「固定資産売却益」という「収益」が増えたため貸方(右側)へ記入。
減価償却をしており、減価償却累計額を計上している固定資産を売却した場合は、その減価償却累計額も取り崩して0にします。
例題では、売却した結果、利益が出ています。
すでに480,000円減価償却をしており、1,520,000円まで簿価が落ちている固定資産を1,750,000円で売却しましたので、230,000円の利益がでます。
この場合は、固定資産売却益が計上されます。
損失が計上される場合は「固定資産売却損」が計上されます。
年度の途中で売却がある場合
年度の途中で売却があった場合は、その月までの減価償却費を計上します。
以下の例で説明します。
「1,000,000円の固定資産で、耐用年数5年、残存価額100,000円の資産を9月30日に売却した。なお、決算日は3月31日である。」
上記の例では、1年間に180,000円減価償却費が発生します。
9月30日に売却したとしたら、1/1~6/30分の6ヶ月分の減価償却費を売却時に計上します。
この場合は6か月分ですから、90,000円の減価償却費が計上されます。
上記の例題に追加してみます。
(借)減価償却累計額 480,000 | (貸)建物 2,000,000 |
減価償却費 90,000 | 固定資産売却益 310,000 |
現金 1,750,000 |
減価償却費が90,000円計上されたと同時に、固定資産売却益が310,000円になりました。
年度の途中で売却があった場合は、そこまでの期間の減価償却費を計上することを忘れないようにしましょう。
学習のポイント(実務小話)
今回は、固定資産の売却について解説しました。
減価償却している固定資産を売却する場合には、その固定資産がどこまで減価償却されているかということの計算が重要になります。
上記の例のように減価償却費が増えるということは、「減価償却費という費用が増加する」という意味と、「売却する固定資産の簿価が低下する」という二つの意味があります。
会社にとっては、長く使った固定資産は、それだけ価値が低下しているということを簿記上の仕訳で表しています。
売るときに、その固定資産の現在の価値はどれくらいか、どれだけ長く使ったか、どれだけ価値が減額したか、を計算して実際に売った値段と比較することで、「売却益」となるのか、「売却損」となるのかが算定されます。
仕訳にすると難しいですが、考え方としては、日常、リサイクルショップなどへ中古品を売却するシーンとそれほど違いはないですね。
【無料お試しあり】社会人知識ゼロから公認会計士合格の僕がおすすめする簿記予備校スクール【簿記3級講座4,000円以下も】