日商簿記3級対策~科目別解説「貸倒引当金②」~
今回は「貸倒引当金②」について解説していきます。
貸倒引当金②
前回の「貸倒引当金①」の続きです。
今回は以下の項目を説明します。
①前期に計上した貸倒引当金が残っている場合
②貸し倒れたお金が回収できた場合
①前期に計上した貸倒引当金が残っている場合
決算日において、前期に計上した貸倒引当金が残っている場合を考えます。
例えば、前期末の決算時に見積もった貸倒引当金が、当期末の決算日でもまだ残っていたとします。
この状態で、当期末に貸倒引当金の決算処理として、見積もった貸倒れそうな金額を算出し、その金額と前期から残っている貸倒引当金を比べて、差額分を貸倒引当金として計上します。
これを差額補充法といいます。
要するに継ぎ足しです。前から残っているものに差額分だけ足します。
以下の例で説明します。
「前期に貸倒引当金を4,000円計上した。当期の決算処理で見積もった貸倒引当金は5,000円である。」
(借)貸倒引当金繰入 1,000 (貸)貸倒引当金 1,000
「貸倒引当金繰入」という「費用」が増えたため借方(右側)へ記入。
「貸倒引当金」という「負債」が増えたため貸方(左側)へ記入。
次は逆に当期の見積もりの方が少ないケースを見てみます。
以下の例で説明します。
「前期に貸倒引当金を5,000円計上した。当期の決算処理で見積もった貸倒引当金は4,000円である。」
貸倒を積んでおかなくてはならない危ない債権が増えたため、貸倒引当金を1,000円増加させます。
(借)貸倒引当金 1,000 (貸)貸倒引当金戻入 1,000
「貸倒引当金」という「負債」が減ったため借方(右側)へ記入。
「貸倒引当金戻入」という「収益」が増えたため貸方(左側)へ記入。
引当金を戻すときは、戻し入れるため、貸倒引当金戻入(れいにゅう)の勘定科目を使います。
貸倒れそうな危ない債権が1,000円減ったので貸倒引当金を積んでおかなくても大丈夫だから戻し入れを行います。
②貸し倒れたお金が回収できた場合
貸倒引当金を積んでおかずに、貸倒れてしまった、回収できなくなってしまった売掛金や受取手形などの債権が回収できたという場合があります。
貸倒引当金とは少し論点が違いますが、こちらの仕訳も説明します。
以下の例で説明します。
「前期に貸倒処理をしていた受取手形1,000円を現金で回収した。」
(借)現金 1,000 (貸)償却債権取立益 1,000
「償却債権取立益」という「収益」が増えたため貸方(右側)へ記入。
「現金」という「資産」が増えたため借方(左側)へ記入。
このようなケースの場合「償却債権取立益」という収益で処理します。
学習のポイント(実務小話)
今回は、貸倒引当金②について解説しました。
はじめは「引当」という簿記の特有の考え方が理解しにくいのではないでしょうか。
貸倒引当金の理解は進みましたでしょうか。
貸倒引当金に限らず、将来に費用や損失が発生しそうな場合は「引当金」を計上しておきます。
例えば、以下のようなものがあります。
職員が退職した場合の退職金を払うための「退職給付引当金」
職員へ賞与を支払ううための「賞与引当金」
売り上げた商品の保証期間の修理費用などの「製品保証引当金」
など、さまざまな目的で計上されます。
その際の処理は、みんな同じで、
いくら費用が発生しそうか(貸倒引当金の場合は、貸倒そうな金額はいくらか)を算出して
〇〇引当金繰入/〇〇引当金
という仕訳で計上して、
〇〇引当金/〇〇引当金戻入
という仕訳で取り崩し(減らし)ます。
貸倒引当金の考え方は、少し難しいところもありますが、これを一つマスターすれば広い範囲で応用できる便利な処理です。
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