日商簿記3級対策~科目別解説「手形貸付金・手形借入金」~
今回は「手形貸付金・手形借入金」について解説していきます。
手形貸付金・手形借入金について
手形借入れとは、約束手形を振り出して、お金を借り入れることをいいます。
手形貸付金と手形借入金は、金銭の貸付けや借入れをするとき、借用証書を用いてお金を貸し借りするのが通常ですが、借用証書の代わりに約束手形を使って貸付けや借入れを行う方法です。
約束手形というのは、手形の振出人(支払人)が、代金の受取人に対して、ある一定の期日に決められた金額の支払いを約束する紙面(証券)のことです。
この場合の貸したお金、借りたお金を、手形貸付金、手形借入金といいます。
手形貸付金・手形借入金の仕訳について
手形貸付金、手形借入金の仕訳について以下の項目で説明します。
①手形を担保にお金を貸した。
②手形を担保としていたお金を返してもらった。
③手形を担保にお金を借りた。
④手形を担保としていたお金を返した。
手形貸付金、手形借入金の仕訳は「手形」が付かない「貸付金」、「借入金」とほぼ同じです。
①手形を担保にお金を貸した。
以下の例で説明します。
「現金50,000円を貸し付けた。なお、担保として約束手形を受け取った。」
(借)手形貸付金 50,000 (貸)現金 50,000
「手形貸付金」という「資産」が増えたため借方(左側)へ記入。
「現金」という「資産」が減ったため貸方(右側)へ記入。
「担保として約束手形を受け取った」という部分で普通の貸付金ではなく、「手形貸付金」と判断します。
②手形を担保としていたお金を返してもらった。
貸付金には利息の計算がつきものです。
以下の例で説明します。
「手形を担保として貸し付けていた50,000円の返済を受け、利息とともに現金で受け取った。なお、年利率は5%で貸し付けた期間は6ヶ月であった。」
(借)現金 51,250 | (貸)手形貸付金 50,000 |
受取利息 1,250 |
「現金」という「資産」が増えたため借方(左側)へ記入。
「手形貸付金」という「資産」が減ったため貸方(右側)へ記入。
「受取利息」という「収益」が増えたため貸方(右側)へ記入。
利息の計算は以下のようになります。
50,000円×5%×6/12=1,250円
③手形を担保にお金を借りた。
以下の例で説明します。
「現金50,000円を借り入れた。なお、担保として約束手形を渡した。」
(借)現金 10,000 (貸)手形借入金 10,000
「手形借入金」という「負債」が増えたため貸方(右側)へ記入。
「現金」という「資産」が増えたため借方(左側)へ記入。
「担保として約束手形を渡した」という部分で、普通の借入金ではなく「手形借入金」と判断します。
④手形を担保としていたお金を返した。
今度は利息を払う方の仕訳を見てみます。
以下の例で説明します。
「手形を担保として借り入れていた50,000円の返済をし、利息とともに現金で支払った。なお、年利率は5%で借り入れた期間は6ヶ月であった。」
(借)手形借入金 50,000 | (貸)現金 51,250 |
支払利息 1,250 |
「現金」という「資産」が減ったため貸方(右側)へ記入。
「手形借入金」という「負債」が減ったため借方(左側)へ記入。
「支払利息」という「費用」が増えたため借方(左側)へ記入。
利息の計算は以下のようになります。
50,000円×5%×6/12=1,250円
学習のポイント(実務小話)
今回は、手形貸付金・手形借入金について解説しました。
手形貸付金・手形借入金の処理は、基本的には、貸付金・借入金の処理と同じです。
利息の計算方法についても慣れておきましょう。
ところで、なぜ手形貸付金というものがあるかといいますと、通常の借用証書を使った貸付金よりも簡単だからです。
借用証書を使った貸付では、返済方法、分割返済額、返済期日、担保などの諸条件を決めて借用証書を作成しますが、これは大変手間のかかることです。
その点、手形の貸付金であれば、手形を発行すれば、そのまま返済期日や担保が決まった貸付金になります。
ただ簡単なゆえに、細かい貸付条件の設定ができず、長期的な貸付、借入には向かないという面があります。
そのため、手形貸付金・手形借入金は、運転資金などの借入期間の短い用途に使われます。
一方、通常の借用証書を使った貸付金・借入金は、建物や土地、大型の機械の購入など、5年、10年と借入期間の長い用途に使われることが多いです。
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