日商簿記3級対策~科目別解説「立替金・預り金」~
今回は「立替金・預り金」について解説していきます。
立替金・預り金について
立替金、預り金は、どちらも一時的に計上しておく勘定です。
立替金とは、本来は従業員や取引先等が負担するお金を、一旦こちら側で支払ったお金です。
実務では旅費・交通費などがその代表です。
預り金とは、文字通り預ったお金の事です。取引先から取引代金を預かったり、ちょっと難しいですが、社会保険料の部分で従業員から預かる部分、税金の源泉徴収額が代表です。
社会保険料について、少しだけ説明します。
社会保険料とは、健康保険料と厚生年金保険料です。これは会社が半分負担してくれています。残りの半分は従業員が払うのですが、毎月の給料から天引きして会社の方で支払い事務をしてくれます。ここで給料日から納付日まで一時的に従業員分を預かっているという意味で預り金が発生します。
立替金・預り金の仕訳について
立替金、預り金の仕訳について以下の項目で説明します。
①お金を立て替えた。
②立て替えていたお金を受け取った。
③お金を預った。
④預っていたお金を支払った。
「立替金」は「資産」です。
いずれは相手からお金が返ってくるからです。相手にお金を貸しているのと同じです。
「預り金」は「負債」です。
一旦預っているだけで後で支払うお金だからです。お金を借りているのと同じです。
①お金を立て替えた。
以下の例で説明します。
「役員の旅費の立替金として、30,000円を現金で支払った。」
(借) 立替金 30,000 (貸) 現金 30,000
「立替金」という「資産」が増えたため借方(左側)へ記入。
「現金」という「資産」が減ったため貸方(右側)へ記入。
役員の旅費の立替えはいずれ回収します。
②立替金を返してもらった。
「先日立替払いした役員の旅費30,000円を現金にて回収した。」
(借) 現金 30,000 (貸) 立替金 20,000
「立替金」という「資産」が減ったため貸方(右側)へ記入。
「現金」という「資産」が増えたため借方(右側)へ記入。
役員から立て替えていた旅費を回収したら、立替金を減らします。
③お金を預った。
「預り金」の仕訳を説明します。
以下の例で説明します。
「給料総額200,000円のうち、源泉徴収税額6,000円を差し引いた額を現金で支給した。」
(借) 給料 200,000 (貸) 預り金 6,000
現金 194,000
「給料」という「費用」が増えたため借方(左側)へ記入。
「現金」という「資産」が減ったため貸方(右側)へ記入。
「預り金」という「負債」が増えたため貸方(右側)へ記入。
会社としては、給料を200,000円払いますので、費用として給料が200,000円となります。
そして、実際に従業員に渡すのは、源泉徴収額6,000円を差し引いた194,000円となります。
残り6,000円はいずれ税金として納めるため、預り金となります。
源泉徴収について少し説明します。
サラリーマンは自分で納税の手続きをしなくても、給料から天引きで会社が納税事務しています。そのため源泉徴収として、毎月の給与から税金が天引きされているのです。
④預っていたお金を支払った。
「預っていた源泉徴収額6,000円を現金で納付した。」という仕訳は以下のようになります。
(借) 預り金 6,000 (貸) 現金 6,000
「預り金」という「負債」が減ったため借方(左側)へ記入。
「現金」という「資産」が減ったため貸方(右側)へ記入。
学習のポイント(勉強の仕方)
今回は、立替金・預り金について解説しました。
預り金のところが、背景となる社会の仕組みを知っておかなくてはならず、少し難しいところです。
国や地方公共団体等は、税金や社会保険料を効率よく国民から徴収するために会社に事務をやってもらう仕組みにしています。
会社が給与天引きしてそれを納めてもらう。
個々人が納税、納付するよりも、まとめて処理できかつ、徴収もれもないというシステムです。
このように税金や社会保険料の納付にも会社は大きな役割を果たしています。