日商簿記3級対策~科目別解説「有価証券(株式)」~
今回は「有価証券(株式)」について解説していきます。
有価証券(株式)について
有価証券の株式について説明します。
株式投資というと、値上がりして売って売却益を稼ぐというようなイメージを持っている方もいるかもしれませんが、株式とは、本来、会社で事業をするための元手みたいなものです。
会社を作って何か事業をします。
その時に、最初は資金がないので、出資を募ります。そして出資が集まったら事業を始めます。その時に出資をしてくれた人に株券を発行します。
会社を運営していって、儲かったら配当金がもらえます。
出資をやめたいと思ったら他の人に売却します。その時の会社の価値で売却します。
この出資をやめる際の株式の売却が盛んになって今の株式投資のイメージとなっているのですね。
上場株式の売買は、値段が上がれば、その分は利益になりますし、値下がりすれば損になります。
有価証券(株式)の仕訳について
ということで、先ほど説明しましたお話と株式の簿記上の処理のポイントも同じです。
①株を買った。
②配当金を受け取った。
③株を売った。
①株を買った。
以下の例で説明します。
「A社の株式100株を、1株につき、1,000円で購入し、手数料3,000円とともに現金で支払った。」
(借) 売買目的有価証券 103,000 | (貸) 現金 103,000 |
「売買目的有価証券」という「資産」が増えたため借方(左側)へ記入。
「現金」という「資産」が減ったため貸方(右側)へ記入。
ポイントは手数料は、売買目的有価証券に含めるというところです。
手数料も含めた総額が売買目的有価証券の金額になります。
仕入の「仕入諸掛り」と同じです。
②配当金を受け取った。
以下の例で説明します。
「所有するA社株式の配当として、配当金領収証1,000円を受け取った。」
(借) 現金 500 (貸) 受取配当金 500
「現金」という「資産」が増えたため借方(左側)へ記入。
「受取配当金」という「収益」が増えたため貸方(右側)へ記入。
配当金領収証は、現金のところで学習しましたように現金として取り扱うものです。
小切手と同じく「現金」で処理します。
③株を売った。
株式の目的の一つに、値上がり益を得るということがあります。
上場している会社の株式は、日々値動きがあります。
そのため、買った時の値段と売る時の値段が違うことが普通です。
その値段の差額が買ったときより高い値段で売ったのであれば、「有価証券売却益」(収益)になります。
逆に買ったときより安い値段で売ったのであれば、「有価証券売却損」(費用)になります。
以下の例で説明します。
有価証券売却益の例
以下の例で説明します。
「所有しているA社株式20,000円を、21,000円で売却し、代金は現金で受け取った。」
(借) 現金 21,000 | (貸) 売買目的有価証券 20,000 |
有価証券売却益 1,000 |
「売買目的有価証券」という「資産」が減ったため貸方(右側)へ記入。
「現金」という「資産」が増えたため借方(左側)へ記入。
「有価証券売却益」という「収益」が増えたため貸方(右側)へ記入。
20,000円で買った株式を21,000円で売っていますので、売却益が出ています。
投資としては儲かったといえるでしょう。
有価証券売却損の例
以下の例で説明します。
「所有しているA社株式20,000円を、19,000円で売却し、代金は現金で受け取った。」
(借) 現金 19,000 | (貸) 売買目的有価証券 20,000 |
有価証券売却損 1,000 |
「売買目的有価証券」という「資産」が減ったため貸方(右側)へ記入。
「現金」という「資産」が増えたため借方(左側)へ記入。
「有価証券売却損」という「費用」が増えたため借方(左側)へ記入。
20,000円で買った有価証券を19,000円で売っていますので、損をしています。
なお、株式についても、決算時に「評価替え」(時価評価)というのを行います。それについては決算の処理のところで詳しく説明します。
学習のポイント(実務小話)
今回は、有価証券(株式)について解説しました。
配当金領収証が「現金」ということは注意しましょう。
株式というと、値上がり、値下がりというイメージが強いと思いますが、会社として株式の売買を盛んに行っていることは稀です。
株式を買う目的の多くは、出資して配当を受け取ることや、株式を通じて議決権を行使することです。
株式の売買は安定成長とは真逆のギャンブル性の高い投資であるということです。
簿記の処理としては、有価証券売却損、有価証券売却益の仕訳をしっかり学習しておきましょう。