「なぜ間接法では減価償却費をプラスするの?」「支払利息が2か所に出てくるのはなぜ?」——簿記を学んでいると必ずぶつかる疑問ではないでしょうか。
本記事では、キャッシュ・フロー計算書の間接法でつまずきやすい3つのポイントを、具体的な数値例を交えて初心者にわかりやすく解説します。この記事を読み終えれば、間接法の構造を論理的に理解できるようになります。
具体例で全体像を確認する
まず、よくある間接法のキャッシュ・フロー計算書の構造を見てみましょう。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 税引前当期純利益 | 300 |
| 減価償却費 | 200 |
| 有価証券評価損 | 100 |
| 支払利息 | 150 |
| ……(その他の調整項目) | xxx |
| 小計 | xxx |
| 利息の支払額 | ▲150 |
「税引前当期純利益からスタートするのはわかるけど、そこに費用をプラスする意味がわからない」という方は多いはずです。順番に見ていきましょう。
疑問① 減価償却費をプラスする理由
一言で言うと?
「減価償却費は、実際には現金が出ていかない費用だから」です。
もう少し詳しく
間接法では、税引前当期純利益を出発点にして、そこから「実際に現金が動いた金額(キャッシュ・フロー)」を逆算していきます。
税引前当期純利益は発生主義にもとづいて計算されているため、実際には現金の出入りを伴わない費用・収益も含まれています。代表例が減価償却費です。
- 減価償却費は損益計算書(P/L)上では「費用」として計上される
- しかし、計上した年度に現金は出ていかない(固定資産を購入した時点で支出は済んでいる)
- そのため、税引前当期純利益から差し引かれてしまっている減価償却費を、「なかったこと」にするためにプラスして戻す
つまり「減価償却費をプラスする=P/Lへの影響を取り消して、実態に近い現金の動きに補正する」という操作です。
より正確に言うと、対象は営業活動に関するものに限られます。固定資産の売却損益など特別損益に含まれるものも同様の加減算対象となります。
疑問② 有価証券評価損をプラスする理由
次に有価証券評価損をプラスする理由を見ていきます。
有価証券評価損は「特別損失」に該当する項目です。営業活動とは直接関係がないため、営業キャッシュ・フローの計算には本来含めるべきではありません。
そこで、税引前当期純利益にプラスして「なかったこと」にしているのです。
整理すると、P/Lの科目に対して加算・減算を行う理由は次のいずれかです。
| 操作 | 理由 | 例 |
|---|---|---|
| 費用項目を加算 | 現金支出を伴わない費用 または 営業外・特別損益の費用 | 減価償却費、有価証券評価損 |
| 収益項目を減算 | 現金収入を伴わない収益 または 営業外・特別損益の収益 | 有価証券売却益など |
要するに、「営業活動によるキャッシュ・フロー」に関係のない損益項目を、税引前当期純利益の影響から除去するのが目的です。
疑問③ 支払利息が2か所に出てくる理由
これが最も混乱しやすいポイントです。
- 小計より上:「支払利息」+150(加算)
- 小計より下:「利息の支払額」▲150(減算)
「同じ150で相殺されるなら意味がないのでは?」と感じるかもしれません。ただ、この2ステップには明確なロジックがあります。
ステップ1:発生主義ベースの支払利息をいったん取り消す(小計より上)
損益計算書に計上される「支払利息」は発生主義で認識されています。つまり、当期中に実際に現金を支払った金額と必ずしも一致しません(前払いや未払いが生じる場合があります)。
そこで、まず税引前当期純利益に「支払利息」をプラスして、発生主義ベースの利息をいったんゼロにリセットします。
ステップ2:実際に支払った現金ベースの金額を計上する(小計より下)
次に、小計の下で「利息の支払額」として実際に現金が出ていった金額をマイナスします。
このように、
- 発生主義の利息を取り消し(なかったことにする)
- 現金ベースの実際の支払額に置き換える
という2ステップを踏むことで、実態に即したキャッシュの動きを正確に反映しているのです。
なお、支払利息を営業活動と財務活動のどちらに区分するかについては会計上の議論もありますが、実務では多くの場合、小計より下(営業活動によるキャッシュ・フローの末尾)で処理されます。
間接法理解のポイントまとめ
今回解説した3つの疑問を表にまとめます。
| 項目 | 操作 | 理由 |
|---|---|---|
| 減価償却費 | 加算(プラス) | 現金支出を伴わない費用のため、P/Lへの影響を取り消す |
| 有価証券評価損 | 加算(プラス) | 営業活動と関係のない特別損失のため、影響を取り消す |
| 支払利息 | ①加算して取り消し → ②小計以下で実額を減算 | 発生主義の金額を現金ベースの実際の支払額に置き換えるため |
間接法の構造が「わかりにくい」と感じる根本的な原因は、「税引前当期純利益を現金ベースに組み替える」という目的が見えにくいからです。この目的を意識しながら各調整項目を眺めると、なぜその操作が必要なのかがすっきり理解できます。
簿記の勉強の理解が少しでも進めば幸いです。関連記事もぜひ参考にしてください。
